ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ

この本を手に取ったのは、村上春樹が翻訳を手掛けているということと、装丁に完全にやられたからです。辞書のようなしっかり、どっしり感。本の内容は置いておいても、所有する喜びで十分ではないかと。
そして読後の感想としますと、村上春樹のあとがきにおいて(春樹はわざわざ90枚にも及ぶあとがきを用意してくれています)、『ロング・グッドバイ』は別格の存在である。他に抜きんでたものがある。幾分おおげさな表現を許していただけるなら、それはほとんど夢のような領域にまで近づいている。と述べていますとおり、ちょっと自分でもびっくりするくらい面白かったです。

自分の好きな本というか、それが世間的にどう評価されているかは別にして、自分が所有したくなる本というのは共通点があって、それはつまりストーリー全体の内容ではなく、文章一つひとつが何度でも読み返すに耐えうるか、ということなのです。この1点で、僕は村上春樹が大好きで、東野圭吾さんはそれほどでもなくて、最近では伊坂幸太郎さんが抜群にいいのです。そして、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』は、この点を僕の基準からは軽くオーバーしちゃって、予想もしないところに着地しそうな感じでした。たぶん2回目を読めば、1回目では見えてこなかった部分がたくさん出てきて、それはもうワクワクしちゃうでしょう。

こんな本には、年2冊も出会えばいいところやと思うんで、大切に付き合っていきたいと思います!!