”ひとり”のにんげん。

疾走 上 (角川文庫)

疾走 上 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

疾走 下 (角川文庫)

舞台は瀬戸内の干拓地。一人の心優しい内省的な少年が、兄の引きこもりや父親の失踪、母親のギャンブル狂いなどの家庭崩壊を経て、殺人犯になるまでの過程を描いた物語。
少年はなぜ人を殺したのか。
なぜそのようにしか生きられなかったのか。




格闘でした。
重松清という作家が、この本に込めた想いが透けて見えるからこそ、自分もそれ相応の気合でもって、読まんとあかんと思った。
週末を利用して、ほぼ一晩で上下巻を読破。


心優しい少年「シュウジ」が生きて、15歳で死ぬまでの物語です。
文章は、「シュウジ」の内面を一人称で描くのではなく、第三者的な視点から「おまえ」という言葉でもって語られる。
ところどころに、目を背けたくなる様な表現が散らばり、随所に聖書の引用が用いられてる。泥臭い村社会が舞台ではあるけれども、それ故「生きる」「死ぬ」ということが鮮明に写し出されて・・・



あまりにパンチの効いた作品だったので、けっこう複雑な気分です。これが「ビタミンF」や「流星ワゴン」を書いた重松さんによるものとは、なかなか信じ難いので。
それでも、重松さんの本を読んでいると、家族を持つというのは、本当に怖いことなんだと、それでもあなたは子供を信じれるのか、と詰問されているようでぞっとします。この物語の語り手が「おまえ」をまるごと抱きしめるほどに「信じている」という事実が、一筋の光であり、言葉にならない感動があると思います。


と、何が言いたいのか分からん文章になってしまった。
やっぱり、この作品の感想を文章として書くには、少し間を置いてからの方がいいのかも・・・><