名もなき毒


名もなき毒

名もなき毒


どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。。


今まで、宮部みゆきさんの本って一つもちゃんと読んだことがなかったんやけど、というか読み進めてもなぜか「違うな〜、やっぱ」とか思って辞めちゃってたんやけど。
今回は、すらりと読めました。
すらりと読めたってのは、文章が薄かったのかな・・・!?とかいう気もしますが。

内容的には、”世間に潜む「毒」というものが、いつどこで我々を侵食してくるか分からない”という命題のもと、「常人の意識を脱した人間との対峙」や「シックハウス症候群」や「土壌汚染」などを物語に汲み込んで、長編なのですが、飽きることなく一気に読めてしまいます。

僕としては、この物語の肝は、嘘をつき、周りの人間を困らすことでしか存在価値を見出すことができない「編集部の元女性アシスタント」だと思うのですが、彼女の人物設定というか、彼女がこのような状態になった背景をきちんと書いていらっしゃらないのが少しがっかりでした。文中でも、彼女の両親が登場して小さな頃からの成長過程を主人公に語っているのですが、両親としても彼女が虚言癖になった理由を「本当に分からない」とし、物語のテーマである「毒」の本質から少し逃げているような気がします。
ここは、その本質が「正しい・間違っている」は別にして、何らかの答えを書いてほしかったなぁ、と一読者として思っております。