今日で旅行も4日目。ちょうど真ん中の日である。本日はフィレンツェの市内観光。ホテルからバスで数十分のところで降りて、下町のような街並みを歩き、シニョーリア広場へ。世界史の資料集によく登場する、ミケランジェロ作「ダビデ像」のレプリカ(本物はアカデミア美術館にある。レプリカといっても大きさも一緒やし迫力抜群!)や噴水などがあって、中世自由都市時代にはここで市民が積極的に議論を交わしたとか。この場所も世界からの観光客が多く見られ、その分スリも非常に多いみたいなので、常に警戒することに。この旅で僕らは、スリのことを「ハンター」と呼んでいた。ハンターの奴らは、こちらから見ていてもすぐに分かる。あいつらは自分の顔に「俺ハンターっす!君らの財布狙ってるんでヨロシコ」とでも貼ってあるかのような顔で辺りをギョロギョロしてる。ここでも早速一人のハンターを発見。警戒、警戒。
それからこの旅初めての美術館へ。フィレンツェと言えば、「ウフィッツィ美術館」である。世界史を取っていた人なら知っている人も多いかもしれないが、ここフィレンツェはあの有名な「ルネッサンス」の舞台でもあった。15世紀後半、その当時この街の大富豪であった「メディチ家」がボッティチェリなどの有名画家を雇ってパトロンになり、芸術の復興が起こった地である。それらの偉大な作品が「ウフィッツィ美術館」に多く展示されているのである。
美術館内部に入るのに30分くらい並び、ようやく中へ入れた。美術館に入るだけなのにボディチェックは厳しく、カメラ撮影が一切禁止なのは残念だった。中へ入ってしばらく歩いていると、本などでよく見かける絵が現れた。貝殻の中から女性が誕生した姿を描いたボッティチェリの作品「ヴィーナスの誕生」である。間近で見た作品のオーラはすさまじく、真ん中のヴィーナスは手と髪で大事な部分を隠す「慎みのポーズ」をとっていた。このヴィーナスはもちろん「マリア様」のことであり、「マリア様」は処女でありながらキリストを生んだと言われているので、「マリア様」は性の象徴となってはいけないのである。その後もボッティチェリの名作「春」やダヴィンチ作の「受胎告知」などを見て、ふむふむと立派に芸術を鑑賞した気分に浸る。ほんまはあんまわからんねやけどね。。それでもやっぱり「これがダヴィンチが描いた作品か〜」とか思いながら眺めていると、よりいっそうの歴史を感じた。芸術鑑賞は楽しいが、人も多いのでけっこう疲れる。
その後、横目にドゥオモを見ながら、昼食の場所に移動。今回の昼食は「パスタ食べ放題」と予定表に書いていたので、僕のテンションはアゲアゲだった。しかし店に着いて運ばれてきた料理はパスタはパスタでも、クリームとトマトソースのマカロニ系パスタ大盛り。というか特盛り。「食べ放題」=「いろんな種類のパスタを少しずつ好きなだけ食べれる」、ということではないようだ。そりゃそうだ。変な期待を持ってしまった僕が悪い。当然だ、「パスタ食べ放題」と書いてあったら、2種類のパスタを死ぬほど食えることだって何も間違っちゃいないさ。でもさ、でもだよ。。やっぱ期待するやん。敬愛する村上春樹はいつだって言ってるじゃないか、「期待するから絶望が生まれる」と。「それでも僕は絶望の"望"を信じる」、あっこれは中村くんの歌だった。何の話しだっけ?あっそうだ、特盛りパスタの話しだ。周りの女の子は、最初に運ばれてきたパスタすら全部食べる子なんていなかった。もちろんツアー参加者で「おかわり」しちゃう奴なんて誰もいなかった。この旅では、鹿野さんに変わって「食獣」の称号を受け継いでいた僕でも無理だった。だって異常な量だもんさ。
本日の昼からはずっと自由行動、僕らは自力でピサの斜塔に行くことを決めていた。オプショナルツアーもあったんやけど、自分らでのんびり行くのも楽しいでしょ、ということで連れと二人で出発。ピサの斜塔に行くためには、フィレンツェ中央駅から特急に乗って1時間ちょっとかかる。なのでまず電車の切符を買うことに。ガイドブックを片手に券売機の前で粘るが、どーもよくわからない。「地球の歩き方」を熟読してもイマイチわからない。僕らの後ろには「おいおいジャポネーゼ、お前らほんと遅せーよ」という声が聞こえてきそうほど、熱い視線で何人かが並んでいたので、券売機での購入を諦め窓口で買うことに。ツアーで僕らともう一組だけ学生男グループがいて、その子達が僕らの少し前で窓口で健闘しながら切符を買っていたので、僕らの番には係りの人もあっさりと切符を売ってくれた。券売機より百倍楽だぜ。電車の2等席に乗り込み、いよいよ出発だ。
世界の車窓から」みたいなヨーロッパの街並みを期待していたが、電車からの風景はなぜか大学に行くまでの京阪と名古屋に向かう近鉄特急からの風景を足して2で割ったような感じで、格別な新鮮さはなかった。たぶん少しのアパートと、あとは木と畑しか見えないからだと思う。日本もユーロも木は木だし、畑は畑だ。揺られに揺られて、ピサ中央駅に着いた。ピサの斜塔へはここからバスで15分ほどだ。駅前のターミナルで、目当てのバスと思われるものを発見し、勢いよく飛び乗った。一応運転手さんに、「ピサ・タワー???」と声を大にして聞くと、なぜかビミョーな含み笑いだけが返ってきた。おいおい、本当に合ってるのかよ。バスが動き出し、周りのお客さんを見ていて、僕と連れは一つのことに気が付いた。「おいおい、金はどこで払うんだい?」。僕らはてっきり日本型のシステムを予想していて、金は降りる時に払えばいいと思って適当に飛び乗ったんやけど、どーも違うらしい。みんな「カード切符」らしきものを持っている(イタリアではタバコ屋や地下鉄の駅などで、あらかじめバス切符を買っておくのです)、やべー。ただその後も周りの動きを見ていると、必ずしもみんながカードを持っているわけでもなさそうなので、ピサの最寄駅に着いた途端、僕らは早々とバスから降りた。そうだ、やっちゃった。無賃乗車だ。人生初だ、犯罪だ。吊るし上げられても文句言えねーゾ。でもけっこうみんなやってるみたいだったので、そんなに気にすることもなく、ピサ・タワーへ。もちろんだが、生まれて初めて見るピサの斜塔はすごかった。よよよ予想以上にヤツは傾いていた。少し前までは、修理の工事かなんかで中に入れなかったみたいなので、相当傾いていたに違いない。ある意味この旅始まって一番の感激だった。自分たちだけで来たせいもあると思うが。横には例のごとく、ばかデカイ教会があって、キリスト教らしい威厳を悶々と醸し出していた。ピサでオプショナルツアーから来ていた、ツアーの女の子一人と出会う。3日目に一緒に晩飯を食って、僕らが「豊中のゴッド姉ちゃん」と名付けた女の子だ。素晴らしく低い声で、ザ・関西弁みたいな言葉をしゃべるゴッド姉ちゃんだ。僕より絶対大阪人らしかった。大阪人として負けた気がしたので、なぜか悲しくなった。さすがゴッド・・・
集合時間と電車時間を考慮して、ピサでの滞在時間は30分ちょいだけだった。でも十分楽しんだよピサ・タワー。そのまま2回目の無賃乗車を行い、駅に帰ってきた。そして電車へ。時間を余裕に見て電車を選んだつもりだったが、しばらくして乗り込んだ電車が各駅停車であることに気付いた。こりゃやばい。各駅だと2時間以上もかかるので、どうしたって集合時間に遅れてしまう。でも心配したって、どーしようもないのでゆっくりと電車からの風景を楽しんだ。そうすると行きの特急とほぼ同じ時間で駅まで着くことが途中で判明した。「地球の歩き方」はウソついてやがった、内心はかなりビビッたんだ。良かった、良かった。結局1時間半ぐらいで、フィレンツェに帰還した。よく考えれば、帰りの電車では車掌が切符の確認に来なかった。イタリアでは「改札」というものがないので、切符は乗車中に全て確認するはずだ。ほんと適当だな、イタリア。車掌だって働きたくなけりゃ、働かない。それがイタリアのルールだ。これじゃ切符を買った意味がまるでない。ここも無賃乗車できたんじゃん。
さてさて今日は大変楽しい一日だった。晩飯はなぜかユーロにて中華料理。でも久しぶりにチャーハン食えて幸せだったよ、なんせリゾットじゃないご飯料理を食いたかったんだから。変な海老もうまかった。謝謝。それでは今日はこの辺で、チャオ。