半落ち


半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)



「妻を殺しました。」現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し、自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの間の行動だけは、頑なに口を閉ざして語ろうとしない。梶が完全に”落ちない”のはなぜか!?その胸に秘めた想いをめぐる物語です。映画でかなり話題になりまして、主役は寺尾聰さんでした。


僕、映画はテレビでちらっとしか見てないのです。真相があいまいに覚えているくらいでした。ほぼ素人同然の頭で小説を読むことができたので、それは良かった。

さて、小説の方ですが、物語としては、梶警部が妻を殺したあと、自首するまでの2日間の空白を巡って、6人の主要登場人物を章立てしながら、進んでゆきます。生々しい警察内部のやり取りや、事件記者たちの焦りや苦悩などは、なるほど元新聞記者の横山さんです、普通の作家では描けない視点が所狭しとあり、面白いです。ただ、本作では、それら登場人物の心情を巧みに描きながら、最後の焦点である、梶警部がなぜ”完落ち”しないのか?という、ただ1点に絞られていきます。


その真相なわけですが、小説では、「ほーーーんの」最後の数ページで一気に描かれています。読んでいる方としては、あっけに取られる感じですよ、ほんまに。映画では、そこの説明というか、回想シーンのようなものが、けっこうずっしりあったと思います。僕としては、映画をもう一度ちゃんと観てみたいですね。小説を読む限り、登場人物たちの心情の揺れの方が断然面白く、梶警部の完落ちしない理由に関しては、結構どうでもよくなってくるので。