三月は深き紅の淵を


三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)



作者未詳、発行部数も限られている。 持ち主はたった一人に、 たった一晩だけ貸すことが許された、幻の稀覯本『三月は深き紅の淵を』。この謎めいた作品をめぐる4つの物語。

1つ目の物語、<待っている人々>で、この幻の稀覯本『三月は深き紅の淵を』の全容を伺い知ることができる。作品は、本作と同じ、4つの章から成っており、それぞれが「黒と茶の幻想(風の話)」「冬の湖(夜の話)」「アイネ・クライネ・ナハトムジーク(血の話)」「鳩笛(時の話)」と名がつくらしい。


タイトルが、何ともそそります。


とにかく感想を書くのすら難しい。本書には、皆川博子さんの解説が付いているが、そこには解説らしい解説はない。というのか、本作においては、誰かの解説なんて必要ないのかもしれない。皆さんそれぞれのご想像にお任せしますわよ、的な感じ。アマゾンの投稿でどなたかが書いていたが、宝箱の中に宝箱があるような小説です。

本作の2つ目の物語、<出雲夜想曲>において、登場人物の女性編集者が小説の物語至上主義を語るシーンがあって、なんとなく筆者の作品に対する想いが伝わってきました。



恩田陸さんは、何でもかなりの読書家だそう。
僕の今までの経験上、小説の登場人物が、読書好きであることは、その作品に対する思い入れがぐっとアップするようです。自分的には、村上春樹の作品に多い現象です。