ラッシュライフ


ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)



伊坂幸太郎さんの2作目。


”一枚の壮大な騙し絵”のような小説です。
5つの物語が同時進行で進む、群像劇の形をとっております。

拝金主義者の画商である戸田に、泥棒を生業とする黒澤(「重力ピエロ」にも出てきたね)、父に自殺されて神に憧れる河原崎、カウンセラーの京子は不倫相手との再婚をたくらみ、相手の妻の殺害を企てる。そして、職を失い家族に見捨てられた豊田は野良犬と時間を共にする。


これらの5つの物語がゆっくりと絡み合い、最後は一枚の額縁に収まる。そして読者に何ともいえない快感を与える、この手の伊坂さんの作品は、本当に面白い。文章は機知に富み、会話はユーモラスで、達観したとこもあり、読んでいてクスッと微笑んでしまうところも、1箇所や2箇所ではない。


中でも、泥棒の黒澤と無職の豊田さんの物語が、秀逸でした。


僕はやっぱりこの方に惚れているようです。